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インプラントの歯にすると内側が狭くなる?

歯を失った顎の骨は、時間の経過とともにどんどん吸収して萎縮していきます。その際、上の顎も下の顎も、外側(唇側や頬側)の骨が無くなって、相対的に内側に向かって萎縮していきます。その結果、歯を失ってから何年も経過すると、本来歯があった場所の直下には、十分な骨が無くなってしまっていることが多いのです。

したがって、歯を失ってから何年も経過した顎の骨にインプラントを埋めようとすると、本来あった歯の位置よりも内側へ内側へとインプラントが位置付けられてしまう傾向があります。

ですから萎縮した顎の場合は、インプラントを外側に傾斜させて将来の歯列の方向に向かうように埋めることが大切です。外側に傾斜させなければ将来の歯の形態が不自然となり、何よりも内側のスペースが狭くなってしまいます。内側が狭いと舌のおさまるスペースが少なくなるので、発音がしにくくなったり舌を頻繁に咬んだりする原因になります。

どれくらい傾けるか、それは術前の入念な形態回復シミュレーションに基づいたトップダウンの埋入計画から決定されます。

インプラントの可変性

インプラントの構造はメーカーによって様々です。

使用されるインプラントシステムのメーカーはもちろんですが、その構造や将来の可変性についても、事前に十分説明をお受けになっておくことをお薦めします。
 
 
例えば、インプラントボディーとアバットメント(支台)や、アバットメントと人工の歯との連結機構は、システムによって大きく異なり、これらに可変性がないと将来の口腔環境の変化に十分対応できない場合があります。
 
 
インプラントも人工物、天然の歯とは異なりますので、長く使って頂くためには、各コンポーネント間に可変性があって、万が一、連結機構の不具合(スクリューが折れたりした場合など)が発生した場合でも、リトリーバルインストゥルメント等により常に対処が可能であることが重要です。
 
インプラントの本数が少なくて残存した天然歯の数が多ければ多いほど、将来の口腔環境の変化に柔軟に対応するために可変性のある設計が求められます。
 
 

インプラントの歯磨き

インプラントの歯の周りの歯ぐき(歯肉)は、一見天然の歯とあまり変わりはありませんが、天然の歯のように歯と歯ぐきが強くくっついているわけではありません。
 
 
天然の歯は歯と歯ぐきが線維で強く結合していますが、インプラントの周りの歯ぐきは人工の歯やアバットメントに接触しているだけです。
 
 
天然の歯と同じ感覚でインプラントの歯の歯磨きをすると、歯ぐきの中に汚れを押し込んでしまいやすくインプラント周囲炎になってしまう危険性があります。天然の歯とインプラントの歯の歯ぐきの付着のメカニズムの違いをご理解いただければセルフケアもより効果的に行っていただくことができます。
 
インプラントの歯には軽い接触で汚れを浮き上がらせて除去することができる音波ブラシがお薦めです。
 
 
すでに音波ブラシを使用されている場合も自己流の歯磨きは危険です。一度自分に合った正しい歯磨きの仕方の指導をお受けになることをお薦めいたします。
 

インプラントの治療記録はとても大切です

 過去に受けられたインプラント治療のメインテナンスを希望されて来院される患者様は数多くいらっしゃいます。転医される理由は、患者様ご自身の転勤による引っ越しなどの事情で、治療をお受けになった医院への通院が困難になったというような場合がほとんどですが、中には重篤なインプラントのトラブルで来院される方もいらっしゃいます。
 
 インプラントのメインテナンスや不具合の改善を行うにあたって重要なことは、過去の治療歴を詳細に知ることです。特に、使用されているインプラントのメーカーや種類、連結されているアバットメントと上部補綴物の固定法などの情報が必要です。国内外に多数存在するインプラントメーカーの種類をレントゲン写真だけで同定するのは難しく、特に上部補綴物の固定法に関してはさらに複雑です。これらの情報が全くない状況でも何とか対処はできますが、情報がある場合に比べて患者様の負担はあらゆる面で大きくなってしまいます。
 
 万が一の時に、何時でも何処でも的確なメインテナンスをお受けいただくために、インプラント治療後には必ず治療をお受けになった医院で、インプラント・コンポーネントの種類とロットナンバー、アバットメントや上部補綴物の固定法などが詳細に記載された治療記録をお受け取りになって保管されておくことをお薦めします。

 

最先端 ≠ 最良

 歯を失った原因や部位は、人それぞれで異なります。失った歯を復元して機能を回復させる治療のことを欠損補綴治療といいますが、この補綴治療の難易度は、歯を喪失した原因と喪失部位によって変わり、歯を喪失してから経過した時間が長くなればなるほど難症例へと移行します。例えば喪失原因である虫歯と歯周病を比べると、歯周病に罹患している人ほどより短期間に難症例へと移行する傾向にあります。歯周病に罹患している場合は、顎の骨の歯を支える力が弱くなっているので、より早く咬み合わせの変化が起こってしまうからです。このように歯を失ってから生じた歯列や咬み合わせなどの変化が、大きければ大きいほど治療は困難になります。
 
 欠損を人工の歯で補う場合、まず歯を失ってから生じたひずみをどれ位改善する必要があるのかを一口腔単位で診断する必要があります。この診断結果にコストや時間的制約など患者様の希望を照らして前処置の内容を検討し、口腔環境の改善を行います。その改善の度合によっては、最先端の欠損補綴治療がいつも最良であるとは限りません。局所の条件が最先端のインプラント治療法の適応であっても、口腔機能全体からみた場合には、従来法のインプラントやブリッジ、入れ歯の方が望ましく、満足のゆく結果が得られる場合も多いのです。
 
 すべての医療に共通することですが、最先端の治療法が患者様にとって常に最良であるとはいえません。治療の選択肢を十分に理解し検討され、場合によってはセカンドオピニオンを求められることも大切です。
 
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インプラント?              
 
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ブリッジ?              
 
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入れ歯?              
 
*写真はすべて患者様の許可を得て掲載しています。

高精度セラミックスで自然で美しい変化を

人工の歯を装着すればいつまでも自然感が保てるというわけではありません。
 
経時的な変化は必ず起こります。
 
装着後の期間に関わらず外観や機能に著しく問題が生じた場合は新しい歯に交換する必要があります。
 
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装着時の自然観を得るために大切なのは光のコントロールと歯肉との調和。
 
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そして将来の変化の仕方は前処置と装着時の精巧さにかかっています。
 
人工物である限り変化は必ず起こりますがそれは天然の歯も同じこと。天然の歯と人工の歯の経時的な変化の仕方の違いが将来の不調和の原因となるので、できるだけ同じような変化を起こすように工夫することが大切です。
 
そのためには装着時の適合や咬み合わせの精度が重要であることはいうまでもありません。
 
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人工の歯同士をつないだりあまり咬ませないように調整したりして変化をさせないように工夫するのではなくて、いかに自然で美しく変化をさせるかが大切だと思います。
 
*写真はすべて患者様の承諾を得て掲載しています。
 

お口のリセット

「入れ歯が全く合わないので、インプラントにしたい」とおっしゃる患者様は大勢いらっしゃいます。

 
しかし、入れ歯の満足度が著しく低い場合に、いきなりインプラント治療をお受けになっても決して高い満足は得られません。
 
入れ歯もブリッジもインプラントも失った歯を補うための「人工の歯(義歯)」。
 
入れ歯が全く合わないという状態は、その時点で、口の中があらゆる「人工の歯」を受け入れることができないということを示している危険信号です。
 
まずは、口の中の環境(咬み合わせや残っている歯の状態など)を「人工の歯」が許容できる状態に変えてあげなければ、何を選択しても良好な結果は得られません。歯を支える手段が変わったことで、一時的な満足が得られたとしても、許容できないという環境の条件は変わりませんから、結局は長持ちせずランニングコストばかりがかかってしまうことになってしまいます。
 
今の「人工の歯」に満足できない場合は、次のステップへ進む前に、お口の中の環境を一度リセットしてあげることも大切です。
 
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今求められる高精度で安全なインプラント埋入

10年位前までは、たった1本のインプラントを埋めるために10本近いドリルの選択使用が可能でした。
 
そしてもちろんドリルはすべて1回きりの使い捨て。
 
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ところが最近は、3本のドリルだけで簡単に骨が切削でき素早くインプラントが埋められますとか、ドリルは5回まで使用に耐えられますとか、簡便さと低コストを追求したインプラントシステムばかりが目立ちます。
 
インプラントの表面性状が進歩してより骨と結合しやすくなった現在では、超精度なインプラントホールの形成は必要なくなったと言えるのかもしれません。
 
しかし、たった1本のインプラントを埋めるために10本ものドリルを使っていた時代の繊細なドリリング技術を今のシステムにも生かせば、現在のインプラントの成功率はもっと向上し、深刻な事故も減るだろうと思うのです。
 
「ドリルは滅菌すれば再使用しても大丈夫、5回まで使用に耐えられます。」と言われても、それでは5回目のドリルを、もし自分が患者であった場合に使用されたいかと問いたいです。
 
簡便さの追求は患者にとって何の利点もないのです。
 
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インプラント~CT撮影の前に

インプラント治療において術前のCT検査は不可欠です。でもただCTを撮影するだけでは、インプラントの適用の可否を正確に診断することはできません。CT撮影の前に将来の歯の形態や咬み合わせのシミュレーションを入念に行っておく必要があります。
 
具体的には口の中の模型を製作して、
 
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その模型上で将来の理想的な歯並びを再現して形態や咬み合わせの診断を行います。
 
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そしてそれらに問題がなければ将来の歯の形が正確に反映されたレントゲン撮影用のテンプレートを製作し、シミュレーションされた将来の歯の外形が画像に写り込むように指標を付けておきます。
 
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そのテンプレートを口の中に装着した状態で一般のレントゲンやCTを撮影すると、将来の歯の形態が画像上にも再現されるので、将来の歯に対するインプラントの埋める位置や方向、深さを正確に診断することができます。
 
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CTやレントゲンの画像上に将来の歯の外形が正確に再現されていないと、インプラントの適用の可否はもちろんインプラントの埋入方針も正確に診断することはできません。とりあえずCTを撮影してみてインプラントができるかどうかを漠然と判断するのは危険です。

インプラント治療の目的は失った歯を取り戻すことであり、インプラントを骨の中に埋めることではないのですから。

 

インプラントの成功率

術前の計画通りにインプラントを埋めることができて、一定の治癒期間後にインプラントが骨と結合し将来の歯を支える条件が整ったことが確認された時、そのインプラントの手術は成功したといえます。そういった意味でのインプラント手術の成功率は現在ではほぼ100%になったといえるでしょう。

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現在では診断技術が向上し、ほぼ術前のシミュレーション通りにインプラントの埋入を行うことが可能となりましたし、使用されるインプラント体もより強固な骨結合を得やすい表面性状に進化したことから、過去に比べると手術の成功率は格段に向上したことは間違いありません。

しかし手術が成功してもそれは単にインプラントと骨が結合しただけで、将来の歯が長持ちするかどうかは分からないのです。
 
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臨床的にはインプラント手術の成功率よりも、インプラントが骨との結合を失うことなくどれくらいの期間人工の歯を支え続けることができたかを部位や設計別に経年的に評価した機能的な生存率の方が重要です。

 
インプラント手術の成功率が向上した現在ですが、経年的な生存率に関しては残念ながら現在にいたっても向上したとはいえません。生存率が上がらない理由は、手術自体の成功率が上がったことで従来では困難と考えられていた症例にまで適用が拡大され、欠損の診断や力学的な配慮が十分に行われないまま強固な骨結合が得られるインプラント体の表面性状だけに頼ったメーカー主導型のインプラント治療が増え続けているからです。
 
経験を問わず誰が手術を行ってもインプラントと骨はくっつく時代にはなりましたが、インプラントが長きにわたって機能できるかどうかは術者の知識と経験にかかっているのです。
 
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*写真はすべて患者様の承諾を得て掲載しています。

虫歯菌

虫歯の原因は口の中の虫歯菌。
 
虫歯になりやすい人は虫歯菌が口の中で元気に頑張っています。
 
虫歯の治療は虫歯に侵された歯質を取り除いて修復をすること。
 
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でもいかに丁寧に虫歯に侵された歯質を取り除いて綺麗に修復しても、
 
虫歯菌がいっぱいいる中でそれが行われたのでは意味がありません。
 
虫歯の痛みを応急的に緩和させたら、まずは徹底的にお口のクリーニングを行うべきです。
 
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虫歯菌が頑張っている中で虫歯の治療を頑張って行っても虫歯の再発を繰り返すだけです。
 
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クリーニングで口の中の虫歯菌の数が減ってもまだ安心はできません。
 
修復する歯を徹底的に清掃し滅菌してから詰め物をしなければ、
 
虫歯菌がこっそり隠れているかもしれないのです。
 
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なぜ虫歯になったかを理解することが虫歯の再発を防ぐ上で最も大切です。
 
痛みをとったり虫歯に侵された歯を綺麗に修復するのは当たり前、
 
大切なことは甘いものが好きな虫歯菌たちを2度と口の中に蔓延らせないようにすること、
 
そこに重きがおかれなければ虫歯の治療はその場しのぎにすぎなくなってしまいます。
 
虫歯菌たちへ決別のメッセージを送ってあげましょう!

歯のオフィスホワイトニング

歯のホワイトニングは、専用のトレーと薬剤を用いて、ご自身で自宅で行っていただくホームホワイトニング法で自然感あふれる十分な明るさと白さが得られますが、より短期間でホワイトニング効果を得られたい場合や、ホームホワイトニング法だけではご希望の明るさに達しない場合、さらにメインテナンス時などには、オフィスホワイトニング(オフィスブリーチング)法を併用されることをお薦めします。
 
オフィスホワイトニングは、ホームホワイトニングで使用する薬剤より高濃度の薬剤を使用しますので、必ずクリニックで歯科医やホワイトニングコーディネーターが行う必要があります。
 
術式は、まず高濃度の薬剤が、歯肉や舌、頬、唇等に付着するのを防止するために、歯以外のすべて部分を専用の保護材や、綿、リトラクターで確実に保護をします。そして、歯の表面に高濃度の薬剤を塗布し、専用のランプで光照射を15分行います。15分経ったら、一度薬剤を除去し、再度新しい薬剤を塗布してまた光照射を15分行い、その後もこの過程を2回繰り返します(トータルで光照射60分)。
 
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オフィスホワイトニングは即効性で、施術後には確実に自分の歯が明るく変化していることが実感いただけます。
 
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このように、すぐにホワイトニング効果が実感できるオフィスホワイトニング法ですが、オフィスホワイトニング法だけの施術では後戻りをしやすいため、明るさを保つためには、ホームホワイトニング法の併用をおすすめしています。

虫歯を小さく治すために

虫歯の治療と歯の修復はです。
 
虫歯の治療前に、最終的に歯に詰める詰め物の種類まで決まってしまっていると、その詰め物に合わせて最初から歯を大きく削ってしまうことになりかねません。
 
検診で虫歯が見つかったら、まずは必要最小限の歯の切削で虫歯に侵された歯質だけを除去して、それから歯の詰め物の種類を検討します。そうすれば必要最小限の修復で済んでしまうことも多いのです。
 
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(上のような治療中の写真をお見せして修復法を検討します。)
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(コンポジットレジン直接修復の例) 
 
あらかじめ決められた詰め物が入るように歯を削ることが虫歯の治療ではありません。
 
詰め物の種類は、虫歯に罹患した歯質を除去した後の健康な歯質の保存状態や治療経過(痛みや知覚過敏の発現具合)などから総合的に検討して決定することが大切なのです。

オールセラミックス~光を通して蘇らせる

神経の無い歯は暗く変色している場合が多いので、歯と同じ色調の人工の歯を装着する場合は、歯の内部や歯ぐきへより光を透過させる工夫が必要です。光が遮断されると人工の歯や歯ぐきに暗い影ができて自然感が損なわれやすいからです。
 
神経のない歯に光を通しやすい半透明の支台(コア)を装着して、金属などのコア材を必要としないオールセラミックスを人工の歯に使用すると、神経の無い歯でも十分な量の光を通すことができるので、歯冠も歯ぐきも生きた天然の歯と変わらない自然感が得られます。
 
光をコントロールして人工の歯を装着すれば、神経の無い歯もみずみずしく蘇ります。
 
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*写真はすべて患者様の承諾を得て掲載しています。(e.maxプレス例)

 

虫歯の痛み

虫歯の痛みは耐えがたいものです。

虫歯菌に歯質が侵されると、歯の中の神経に刺激が伝わりやすくなり、強い知覚過敏を感じるようになります。虫歯が原因の知覚過敏は、冷たい物だけでなく熱い物や甘い物の刺激に対しても痛みを感じるのが特徴です。虫歯が深く神経にまで虫歯菌が達すると、夜眠れないような強い痛みが続くようになります。神経や血管が入っている空洞の中で細菌が増殖し、炎症反応で内圧が高まるので激痛を起こすわけです。

虫歯は一見小さくても、中では広く深く進行している場合が多く、このような場合は、神経まで感染していなくても、虫歯に侵された歯質を除去した後、一度消炎鎮痛効果のある材料で仮詰めを行い、しばらく症状の変化を観察する必要があります。
 
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歯質が崩壊し、熱や酸などの外来刺激を繰り返し受けていた歯の内部の神経血管組織は、細菌に感染していなくても炎症を起こしている場合が多く、炎症の消退を確認せずに、歯を修復して治療を終了してしまうのは望ましくありません。仮詰め後1週間位は症状の観察を行い、痛みや知覚過敏等の症状が消失または軽減していることを確認して、それから最終的な材料で歯の修復処置を行います。
 
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臨床では、患者様が訴える痛みと疑われる虫歯との関連付けが難しい場合が良くあります。歯の痛みには、虫歯のような歯質の感染以外にも、ストレスによる歯ぎしりやくいしばり、歯の破折や歯周病、顎関節症や関連痛などさまざまな原因があり、これら多くの原因が複雑に絡み合って痛みを起こしている事が多いからです。このような場合は、過去にさかのぼって症状を細かく分析しながら、原因を特定していくことがとても大切です。治療も、まずは後戻りができる方法で疑われる要因を少しずつ取り除いてゆき、原因を特定していくという段階的な方法がとられます。例えば、虫歯で神経への感染も疑われるが、咬み合わせの要因も大きいので、神経をとってしまう前に、まず咬み合わせの調整を行って様子を見てみるとういう具合です。
 
削ってしまった歯や、除去した神経血管組織は二度と再生しません。
 
虫歯を疑って歯を削ったり神経をとって治療をしたりしたけれど、痛みがいまいち引かないなどということにならないためにも、応急処置後は結果を急がず、じっくりと症状を観察しながらより広い視点で治療を行うことが大切なのです。

入れ歯の前処置

咬めない、痛い、違和感がある、見た目が悪いなどを理由に入れ歯を敬遠されている方は多いのではないでしょうか?実はそれらの不快症状は、入れ歯を正しく装着するための口の中の環境整備(マウスプレパレーション/前処置)が、十分行われていない場合に発現している場合が多いのです。
 
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虫歯や歯周病の治療はもちろんですが、入れ歯の着脱方向を規制するために入れ歯の鉤(入れ歯を歯に固定するための金属性の突起、バネ)がかかる歯の形を整えたり、スペースを確保したり、咬み合わせを調整したり、粘膜や顎の骨の形を修正したりと、入れ歯を装着するためには口腔環境の整備が必ず必要です。
 
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でも、残念ながら入れ歯のための前処置は軽視されがちです。入れ歯は、前処置が十分に行われていなくてもそれなりに製作し装着することができるからです。
 
十分な前処置が施されずに装着された入れ歯は、残存している歯やその他の口腔組織と機能的にも審美的にも調和することができず、結果前述のような不快症状が発現する原因となります。そして、お口の環境を悪化させる原因にもなり、残存歯やその他の口腔組織に為害作用を与え、歯の動揺や顎の骨の吸収を助長します。
 
前処置を行わなければ少ない来院回数で入れ歯が完成しますが、結局、調整のための来院回数が著しく増えることになります。
 
長年使用した入れ歯を再製作する時も、口腔環境の見直しが必ず必要です。
 
前処置は、インプラントやブリッジでも同様に必要ですが、特に入れ歯は前処置による口腔環境の改善度合いの善し悪しに影響を受けやすい補綴物であるといえます。

インプラントの咬み心地

天然の歯は根の周りに歯根膜という組織がありますがインプラントにはありません。インプラントは天然の歯と違って直接骨に結合しているからです。 
 
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天然の歯のようなクッションが無いインプラントは、いったいどのような咬み心地なのでしょうか?
 
実際にはインプラントと結合している骨にも弾性がありますので、インプラント同士で咬む場合でもあごの骨にすごく響くとか、天然の歯に比べて硬い咬み心地がするとかというようなことはありません。カチカチ咬んだ時の咬み心地は天然の歯にすごく近いといえるでしょう。
 
しかし食品の捕捉のしやすさは明らかに違います。天然の歯同士では野菜の繊維のように細くて芯のある食品でもしっかりと捕捉することができますが、これは上下の歯が咬んで合わさった後に、歯同士が少しねじれるように動いて微妙に位置を変え、よりしっかりと食品を捕捉してくれるからです。天然の歯は、歯根膜組織の厚み分歯が動いてくれるのでしっかりと食品を捕捉することができるのです。
 
一方、インプラント同士で咬む場合は、咬み合った後も歯はほとんど動いてくれないので、細くて薄い食品は捕捉しにくく、するりと歯の間から逃げてしまいがちです。インプラントの歯を装着された方の多くは慣れるまで野菜の繊維のような芯があって薄い食品が食べにくいとお感じになるでしょう。天然の歯とインプラントの歯の実際の動きの違いは、天然の歯は数100グラム程度の力が加わっただけで50μm以上も一気に動くのに対して、インプラントはほとんど動きません。
 
天然の歯とインプラントの歯の動きの違いを考慮した義歯の設計とメインテナンスが必要です。その違いが考慮されなければ天然の歯とインプラントの歯の機能的な調和は短期的にも長期的にも得られないでしょう。
 
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